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自分らしく、気持ちいい。毎日を楽にする『ずぼらとこまめ』な生活術とは?

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ヘアメイクアップアーティストの草場妙子さん、編集者の柴田隆寛さん、ブランディングディレクターの福田春美さん

 
ブランディングディレクターの福田春美さんによる、忙しい毎日を気持ちよく過ごす工夫をまとめたエッセイ集『ずぼらとこまめ 』の刊行を記念して、トークショーが開催されました! お相手は、日常のメイクのアイディアブック『TODAY’S MAKE-UP』を今年4月に出版された、ヘアメイクアップアーティストの草場妙子さん。司会に編集者の柴田隆寛さんをお招きした今回のトークのキーワードはずばり「ずぼらとこまめ」。福田さんの生活術、草場さんのメイク術には、「ずぼらポイント」と「こまめポイント」をバランスよく取り入れ、「自分らしさ」や「心地よさ」を大事にするという共通点がありました。
 
文=佐藤南(SPBS編集部)
写真=SPBS編集部
 

「きちっと、丁寧」から自分を解き放つ

柴田:お二人と今回のトークショーの打ち合わせをしてて、考え方に相通じるものがあるのかな、と思っていて。草場さんが書かれた『TODAY’S MAKE-UP』は、帯に「毎日のメイクを、自分で選ぶ。小さな変化が好きな自分をつくっていく」っていう、いいコピーですよね。自分男性なので、メイクというと「気合いを入れてするもの」のイメージなんですが……。
 
草場:そうですよね、そういうイメージがありますし、メイクの世界ってすごく色とりどりで華やかですよね。でも、自分の日常にそういう華やかさを取り入れようと思うと、ちょっと違和感があって。なのでこの本は、「自分らしく」メイクをするにはどうしたらいいかとか、どういうものを選べば心地よくいられるかっていうのをテーマにして、つくりました。
 
柴田:春美さんの本の帯も、石井ゆかり先生が書かれてますけど、「正しいやり方よりまずは『自分のすきなもの』。」っていうね。お二人の「自分らしい自分をつくる」っていう考え方が共通しているな、と……いまきれいにまとめようとしてるんですけど(笑)。
 
福田:私も妙子さんの本を読んだときに、ヘアメイクさんのイメージとは違って、奇をてらったメイクじゃなくて、でも色は好きっていう、引き算を楽しんでいるところがすごく素敵だなと思ってました。
 
柴田:もしかしたら引き算と足し算みたいなところが『ずぼらとこまめ』っていうキーワードに繋がるのかもしれないですね。春美さんにちょっとお伺いしたいんですけど、春美さんの本の「終わりに」のところで、担当編集の方に半年この企画を待ってもらって、どうやってつくろうかなって考えたときに『ずぼらとこまめ』という言葉が出てきて、「これだったら私が本を出す意味があるかも」と踏み切れたっていうエピソードが書かれていて、結構印象的だったんですけど。
 
福田:お仕事の依頼が来たとき、そのプロジェクトの方達と会う前に、内容を一回メールで送ってくださいって言うんですよ。なるべく人に会いたくないので(笑)。それで数日お預かりして、アイデアが出なかったら「私じゃないのかな」と判断するんですね。でもこの本は、編集者の方とお会いしたときに、「私が本を出す意味ってなんだろう?」ってすごく考えてしまって、半年ぐらい待っていただいたんです。あるとき家の片付けをしていたらふと『ずぼらとこまめ』っていう言葉を思いついて、「あ、これだったらできるかな」と思って、そこから一気に書くことを考えて、編集者の方に連絡しました。
 
柴田:なるほど。あと、春美さんっぽいなーって思うのは、「こうした方がいいよ、とか1ミリも思ってないので!」っていう。
 
福田:最後の1文ですね(笑)。
 
柴田:最後のね(笑)。草場さんもそうだと思うんですけど、マニュアルをつくりたいとか、読んだ人に自分のメイクのやり方を押し付けたいわけではないんですよね。
 
草場:そうですね、私もメイクに関して、NGは一切ないと思っているので。マニュアルに縛られずに、どう自分らしくやるかっていうところを大事にしたいなと思ってます。
 

「居心地のいい自分」「好きな自分」がいいよね、と、お二人のトークで会場は和気藹々とした居心地のいい雰囲気に包まれた

 

「きれいに見せる」は二の次。「自分らしい」メイクのコツ

草場:プロのモデルさんじゃない方にヘアメイクすることも結構あるんですけど、そういう方に、とにかく仕上がりがきれいだからといってきちんとヘアメイクをつくり込んでしまうと、自分の顔じゃなくなってしまうので、カメラの前に立つのがすごく嫌になると思うんですよね。「その人らしさ」っていうものが欠けてしまうので。それが一番、自分の中で排除したい部分ですし、「きれいに見せるためにヘアメイクをする」っていう感覚は、ないことはないんですけど、それは一番じゃないっていう感じですね。
 
柴田:春美さんのご自宅も、「私の部屋おしゃれですよ」って見せる部屋じゃないんですよね。
 
草場:本当に本の写真のまんまですよね。写真に撮るためにものを置くとか、ちょっときれいにするとか一切なくて。
 
福田:よくよく見るとお茶碗がひっくり返ってたりとか、ちょっとずれてたりとか(笑)、本当になるべくそのままで撮りました。
 
柴田:作為がないから、居心地がいいっていう話をこの前もしてましたね。
 
草場:そうなんですよね。
 
柴田:お二人に共通して、いい意味でずぼらなところ、「抜け感」がありますよね。女性として「これでいいのだ」と思えるようになった、きっかけはありますか?
 
草場:私の場合は、「抜け感」というところで言うと、例えば肌にシミがあったり、クマがあったり、自分でも気になってはいるんですけど、そこをきちんときちんときれいにカバーしてしまうと、やっぱり自分が求めているバランスじゃなくなっちゃうっていうのがあって。ちょっとはコンシーラーを薄く使ってカモフラージュしますけど、きれいな肌につくりたいわけじゃなくて、むしろ「つくり込んでいる感」を排除したほうが、私は自分らしいな、と思っています。
 
柴田:「きちっとしてなきゃ」みたいな、縛られている感じをどうやったら解き放てるんですかね。
 
草場:バランスかな、と思いますね。肌をそんなにつくり込まない分、ヘアは毎朝ちゃんとスタイリングしてツヤを出すっていうのが好きなスタイルです。
 
柴田:その、ずぼらでいい部分と、こまめな部分の差し引きって、どうしたら身につくものなんでしょう。
 
草場:どういう風になりたいかとか、どういうヘアメイクをしたいか、どういうファッションと合わせたいかっていうのは、割とこまめに考えます。その結果やっているヘアメイクは多分、1分半くらいで終わっちゃうんですけど。
 
福田:1分半でこの仕上がり、さすが!
 
草場:そういう『ずぼらとこまめ』があるのかな、と。
 

草場さんはメイク道具をスライドで紹介しながら、日常で使える「ずぼらとこまめ」なメイクのポイントを解説。メモを取りながら聞かれるお客さまも

 

おもてなしの空間、でもストレスフリー

柴田:詳しくは本で読んでいただきたいんですが、春美さんはよくご自宅に友人を招いてもてなしの会をやるんですけど、なんだろう、あの放っときっぱなし感と、もてなし感のバランスが、すごく居心地が良くて。
 
草場:私も招いていただいたとき、一緒に呼んでいた方が大先輩ばっかりで、すっごい緊張して行ったんですけど、最初にみんなでお茶を飲んだりお菓子をつまんだりした時点から、すごくリラックスしちゃって(笑)。
 
福田:あ、良かった。
 
草場:福田さんがお食事をつくってくださって、どんどん出てくるんですけど、キッチンとリビングが一続きになっていて。
 
福田:そうですね。
 
草場:福田さんがお料理しながら、話に加わりつつ、下ごしらえバッチリのものを手際よく仕上げて出してくださるので、「美味しいですね」って言いながら、一緒にその場を楽しめるっていう。
 
福田:うちのキッチンって、棚が全然なくて、いろんなワゴンを配置して、なんとなくここまでがキッチンかなって雰囲気にしてるんですよ。
 
柴田:そのおもてなしの塩梅っていうか、こまめなところと、ある意味放っておいて、いい意味でずぼらなところのバランスで心がけてることはありますか?
 
福田:例えば、グラスとか出しっ放しなんですよ。というのも、おもてなしするとき何が一番大変かっていうと、ご飯つくってると、みんな手伝おうとしてくれるじゃないですか。「コップどこですか」「お皿どこですか」って聞かれて、それに答えていると、逆に仕事が増えていくんですね。自分はいまのタイミングで炒めたいんだけどっていうときもあるので、グラスも一番お客さまが見えるところに置いてあるし、勝手に取れるようにしています。
 
草場:そういう感じですね。
 
柴田:でもやっぱり基本的に、自分の好きなもの、心地いいもので構成されてるから、出しっ放しになっててもストレスにならないんでしょうね。全く隠してないですもんね、春美さん家行くと。
 
福田:隠してないですね、本当に。
 
柴田:人柄にも表れてますよね、全然隠さないっていう(笑)。気持ちいいぐらい。
 

仕事の打ち合わせの前には綿密な下準備をされるという福田さん。日常で溜まったストレスを料理の「こまめ」な作業で解消しているそう

 

写真左:『ずぼらとこまめ』福田春美/著(主婦と生活社)、右:『TODAY’S MAKE-UP』草場妙子/著(アノニマ・スタジオ)

 
<プロフィール>

福田春美(ふくだ・はるみ)さん/ブランディングディレクター

1968年生まれ、北海道出身。いくつかのセレクトショップのバイヤー、プレス、ディレクターを経て、2007年自身のブランド〈Hamiru〉を立ち上げ、同時に渡仏。2011年帰国。現在はライフストアのブランディング、様々な企業のプロジェクトの立ち上げや再生案件、ホテルなど、インテリアスタイリングを幅広く手がける。趣味は料理と旅。

 

草場妙子(くさば・たえこ)さん/ヘアメイクアップアーティスト

熊本県出身。雑誌や広告、CMなどでモデルや女優のヘアメイクを手掛ける。インスタグラムでは、愛用コスメを自分の言葉で紹介。書籍『TODAY’S MAKE-UP 今日のメイクは?』をアノニマスタジオより2018年4月に刊行。

 

柴田隆寛(しばた・たかひろ)さん/編集者

講談社『HUGE』の編集者を経て、2013年マガジンハウス『& Premium』 のエグゼクティブディレクターに就任。創刊から約3年半にわたり同職を務める。2015年に編集事務所Kichiを開設。雑誌・書籍・web・広告・イベントのディレクションなど、ファッョン・ライフスタイルの領域を中心に活動しながら、クリエイティブコミュニティ「MOUNTAIN MORNING」のメンバーとしても活動中。

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