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デザイナー市東基さんがSPBS新ロゴで意図したこと

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デザイナー市東基さんがSPBS新ロゴで意図したこと

創業10周年を機に、SPBSは大きく生まれ変わりました。CI(Corporate Identity)を一新し、これまでの赤いラインが印象的なイラストロゴは、白黒のテキストロゴになりました。

アートディレクションを手掛けたのは、アートディレクター/グラフィックデザイナーの市東基さん。SPBSのブランドイメージを大きく変えたこのデザインを、市東さんはどのようにつくり上げていったのでしょうか。その制作意図をうかがいました。

 

文・写真 = SPBS編集部

 

表現したのは「レガシー」「コンテクスト」「ブック」

──どのような経緯で、今回SPBSの新CIのデザインを手掛けることになったんですか?

 

市東:私自身、最初はSPBS本店のお客さんのひとりでした。「Sitoh」という自分のデザイン会社をつくったのですが、1年ほど経って「仕事の幅を拡げてみよう」と思い、いろいろなところに会社案内のレターを送ってみたんです。SPBSの代表にも送らせていただいたのですが、それがきっかけでお声がけいただきました。

 

──そうだったんですね。今回がSPBSの初めてのお仕事だったのですね。

 

市東:そうなんです。正直、こんなにすぐ仕事に繋がるとは思っていませんでした。「新しいSPBSを表現したいから新しい人にお願いした」と代表は話していました。

 

──「10周年」を迎えてのデザインリニューアルでしたが、どのようなところから考えはじめたんでしょうか?

 

市東:SPBSが「ヒトとモノとジョウホウが行き交い、文化が育まれる場所」ということを企業理念にして創業し、今日を迎えるまでの歴史。そして、SPBSは今後Webメディアと店舗が融合した企業体を目指していくということを伺って、まずはWebと店舗を中心とした拡がりの見えるコンセプトを考え始めました。同時に、10周年のキャッチコピーが「なんか、新しい」なので、新しさを表現しつつも、10年間の歴史と本屋らしさを感じられるようにバランスをとりました。

 

──新しいデザインのプロトタイプをいくつもつくったのですか?

 

市東:そうですね。感覚的な表現と考え方としてのデザインを相互につくって、肉付けしては削ぎ落とす、その作業を繰り返していくという流れでした。なので気付いた時にはたくさんのプロトタイプができていました。

 

──今回の企業ロゴは「白黒」の印象が強いのですが、ロゴカラーはどのように決まっていったんですか?

 

市東:まず、これまでのロゴタイプの色である黒を引き継いで、10周年という新たなスタートにも採用したいと思いました。

そこで、企業理念の「ヒトとモノとジョウホウが行き交い、文化が育まれる場所」に基づいてSPBSの各事業ごとに色を選定しました。その複数の色(赤、青、黄、緑)が交差する部分をメインカラーとしています。

 

 

──新ロゴを拝見して、まず目に入ってきたのは「本」のイメージでした。「P」と「B」が、それぞれ少しずつ傾いていて、本を開いているようにも見えますよね。

 

市東:そうですね。実はこれ、角度は10°ずつ傾いているんです。

 

──なぜですか?

 

市東:10周年という機会にロゴを新しくするので、10というエッセンスをロゴにも含めたいと思い、「P」「B」を10°ずつ傾けて本のイメージを作りました。

 

 

もうすこし細かく説明すると、このデザインには、「レガシー・コンテクスト・ブック」という三つのテーマがあるんです。「レガシー」は、本を売り続けている本屋という業態を受け継ぐ精神のようなもの。「コンテクスト」は、10年培ってきた文化を未来へ文脈として繋いでいくということ。「ブック」は、SPBSの中心は“本と編集の総合企業”であるということ。それを、文字組の傾きで表現しました。この三つのテーマがすべてつながって、それらが企業理念の「交差点」を表現しつつ、ひとつのビジュアルを成立させています。

 

SMAPから考える、ロゴと実態の関係性

──他の大きな変化としては、イラストがなくなり、テキストのみのデザインになりました。ここにはどのような意図があったんですか?

 

市東:まずは名前の認識のスピードを早くしたいなという思いがありました。たとえば「Apple」と聞いたら、あのリンゴのマークがすぐ思い浮かびますよね。逆も然りで、あのリンゴのマークを見たらすぐ「Apple」と認識できます。そういった形で、ロゴと名前を行き来する認識のスピードをあげたいなと。

「SPBS」の4文字は既に正式名称の「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS」の略称なので、何か別のイメージをつくるというよりは、そのアルファベット4文字自体を一つの象徴としてイメージ付けた方がいいと思いました。

 

──同じアルファベット4文字のロゴというと、「SMAP」を思い出します。

 

市東:確かに。インパクトのあるすばらしいデザインでしたね。CDショップをはじめ、当時は街のいたるところに、あのロゴが溢れていました。

 

──それまでアイドルといえば、にっこり笑った顔写真がCDのジャケットを飾るのが当たり前だったのに、ロゴだけでジャケットをつくるなんて、グループの認識のさせ方としては斬新ですよね。

 

 

市東:はい。デザインもシンプルで、誰でも作れそうで作れない、一度見たら忘れない力強さがある。このような力強いロゴは、得てして実態そのものを「食ってしまう」のですが、SMAPはそうなりませんでした。アイドルとして自体も強いのでロゴデザインの力強さと共存することができた。そこが大きなポイントだったと思います。

 

共感度では「かわいい」の方がウワテ

市東:もうひとつ大切なポイントが「共感」です。たとえば「かっこいい」と「かわいい」では、かわいいの共感の方が“強度と速度”がウワテだと思うんです。

 

──そうなんですか。

 

市東:かっこいいって、自分だけのものというか、あまり人に教えたく無いものというか。かっこいいと感じるものって、人によってけっこう違う気がしませんか?(笑)その一方、かわいいはある程度共通の感覚としてある。

 

──企業のイメージキャラクターとかも、どちらかというと全部かわいいタイプですよね。

 

市東:そうですね。どんなブランディングも、かわいい要素はどこかに残さないといけないなと思います。

 

──今回のSPBSの新ロゴにも、かわいい要素はありますか?

 

市東:ロゴ自体に可愛い要素はほぼ無いですね(笑)。SPBSのブランディングという点では、取り扱う本やイベント・スタッフの方々に「かわいい」ポイントはたくさんありますので、デザインではクールな要素を増やしてすみ分けしました。誰も気づかない少しかわいい点でいうと、実は直線がひとつも入っていないんです。

 

──そうなんですか。

 

市東:「P」も「B」も、縦横の線は真っすぐではなく、どれも微妙に丸みをつけて湾曲しています。本屋として、人が介在している温かみを表現したいという意図も込めました。マニアックでしたね。

 

──それは気付きませんでした。聞けば聞くほど、素晴らしいロゴをつくっていただいたなと思います。SMAPのように、実態が「食われない」かどうか、これからのわたしたちの活動次第ですね。

 

市東:頑張って下さい。

 

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市東基(しとうもとい)さん

1981年北海道生まれ。2013年フリーランスとして独立、2016年にブランディング・デザインコンサルティングを主軸とした「Sitoh inc.」を設立。明快なアイデアと力強いデザインで人・企業・社会・文化を繋ぎ、デザインコンサルティングの観点からコミュニケーションの設計を追求している。www.sitoh.co.jp

 

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