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粕川店長と語り合うSPBSの売れ筋についてのあれやこれや1月号

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粕川店長と語り合うSPBSの売れ筋についてのあれやこれや1月号

 

どうしてこの本が売れているのか?

お客さまは、いまどんな読み物を求めているのか? など、

『ほぼ最新のランキングから』は、奥渋谷の本屋「SPBS本店」の先月のベストセラーランキングを肴にして、粕川店長にあれやこれやと振り返ってもらう企画です。 さあ、今回もいってみましょー!

 

文・写真=SPBS編集部

 

1位:『ニューヨークで考え中(2)』(亜紀書房・近藤聡乃著)

──粕川店長、よろしくお願いします!

 

粕川:……はっ! すいません、ちょっと休憩明けでボーっとしてました……。よろしくお願いします!

 

──起きて下さい(笑)。さて、1月のベストセラーランキングを振り返ります! 1位は、『ニューヨークで考え中(2)』でした。こちらはどういう本なんでしょう?

 

粕川:ニューヨーク在住の漫画家・近藤聡乃さんが日々の暮らしを描くエッセイコミックです。1巻は、渡米直後のお話が中心だったんですが、今回ランキング入りした2巻はその続編になります。ニューヨークに引っ越して約10年、向こうでご結婚もされて完全にニューヨーカーになりつつある近藤さんが、独特のテイストで日々の暮らしを描いています。

 

──店頭では、複製原画展もやっていますよね。

 

粕川:はい。私も大好きな作品だったので、2巻が出ると聞いて「これは何かやらなければ!」と思い立ち、出版社の方にご相談して実現しました。複製原画をお借りして、壁に目立つように展示しています。ちなみに複製原画の展示は、お店としては初めての試みです。

 

 

SPBS本店のコミックコーナーで開催中。
壁一面に、近藤聡乃さんワールドが広がっています

 

 

──ふらっと入店されたお客さんも、ついつい読みふけってしまいそうですね。

 

粕川:はい、おかげさまで好評です。少し見ていただくと分かるんですが、文字がすべて手書きなんです。とても字がきれいで、絵もシンプルで読みやすい。見開き1ページで1話読み切りの構成になっているので、気が向いたときにパラっとめくって楽しめる作品です。あと、このコミックは、勝手に閉じてしまわないように製本されていて、手で押さえなくても開いたまま置いておけるから、お茶を飲んだりお菓子を食べながら読むこともできるんです。そういった自由な読み方ができるところも、SPBSのお客さまにマッチしているのかなと思います。

 

2位:『山田全自動でござる』(ぴあ・山田全自動著)

──続きまして、1月ランキングの2位は『山田全自動でござる』でした。

 

粕川:こちらもとてもおもしろい1冊です。日常の、ついクスッと笑えてしまうような“あるあるな光景”を、浮世絵調に描いています。1月下旬頃から2月中旬、お店のギャラリースペースで展示企画を開催していました。展示を見てハマってしまって「思わず本も買っちゃいました」というお客さまが結構いらっしゃいました。

 

 

──とてもシュールで、面白いイラストですよね。浮世絵テイストなので印象に残ります。

 

粕川:そうなんです。今回、著者の山田全自動さんのサイン会も開催したのですが、ファンの方が多数来店されて大盛況でした! 山田全自動さんは福岡にご在住なのですが、東京でこういった展示やサイン会を開催するのは初めてだったそうです。

 

──私も行きたかったです! 日めくりカレンダーのように毎日見ていくのも楽しそうですよね。

 

粕川:はい。パラっとめくって楽しめるという意味では『ニューヨークで考え中』と似ている部分があります。ちょっとした短い空き時間にサラッと読めるのはポイントですね。

 

4位:『孤独を生きる言葉』(河出書房新社・松浦弥太郎著)

粕川:4位の『孤独を生きる言葉』も、同じようにサラッと読んで楽しめる本です。松浦弥太郎さんの新作なんですが、ひとつの言葉と解説文で1ページが構成されていて、合計150の言葉が載っています。ちなみにひとつ目の言葉は「関係性とは育てるもの。」で、最後の言葉は「成功の反対は失敗ではなく何もしないこと。」です。

 

──先の2冊と、とても似てますね。1ページ目から「さあ読むぞ」と腰を据えて読み進めるというより、日々のちょっとした隙間時間に数ページだけ読んでみる、というような読書の楽しみ方をする人が増えているのかもしれませんね。

 

粕川:まさしくそうですね。いろいろな本の読み方があって良いと思います。普段あまり本を読まない方が、ちょっと手にとってみようかなと思える本があるのは素晴らしいことですし、そういった本も積極的にそろえていきたいと思っています。

 

──今回ご紹介したのはTOP5のうち3タイトルでしたが、前回に引き続き、それぞれに共通するものが見えて面白かったです。

たとえちょっとずつ楽しめる本であっても、ついつい読みふけってしまって粕川店長みたいに休憩明けにボーっとしてしまわないように注意が必要ですね(笑)。

 

粕川:き、気をつけます(汗)。

 

【1月 SPBS ベストセラーRANKING】

1位:『ニューヨークで考え中(2)』(亜紀書房)1,080円(税込)

2位:『山田全自動でござる』(ぴあ)1,080円(税込)

3位:『ATLANTIS zine』(SPBS) 1,404円(税込)

4位:『孤独を生きる言葉』(河出書房新社)1,080円(税込)

5位:『POPEYE (ポパイ) 2018年 02月号 特集・部屋とシティボーイ』(マガジンハウス)880円(税込)

 

<プロフィール>

粕川ゆき(かすかわ ゆき)

SPBS神山町本店店長。スポーツメーカー、ヴィレッジヴァンガード勤務を経て、2012年SPBSにアルバイトとして入社。17年3月より店長に就任。書籍、雑貨のセレクトのほか、フェアやイベント企画など、店舗全体の運営に携わる。実店舗の無い“エア本屋”「いか文庫」の店主としても活動中。

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