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【奥渋谷探訪】#07 SPBSに来て夜遅くなったら、奥渋谷の“サードプレイス”〈ザンジバル〉でお酒とカレーを

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〈ザンジバル〉田中達也さん

富ヶ谷と代々木公園を繋ぐ富ヶ谷交差点付近で“乙”と書いてあるネオンのお店をご存じですか? “Z(ゼット)”、“乙(オツ)”、なんて読むの? と疑問に思う人も多い気になるお店〈ザンジバル〉田中達也さんにお話をお聞きました。

取材・文=上田那奈
写真=横尾涼

飲食店向け物件が品薄の富ヶ谷エリアに移転できたわけ

──お店の成り立ちを教えていただけますか。

田中達也さん(以下田中):もともと飲食店は、代々木八幡エリアにあった古い建物の2階でやっていたんですよ。そこが耐震問題で建て替えるということで、2013年に現在の場所へ移転しました。

──代々木八幡からこのあたりは、ちょっと前まで人通りは多くなかったですよね。

田中:そうですね。いまは休日の人通りなんかすごいですよね。うちがいまの場所に移転してきたのは平成25年10月なんですけど、その頃にはこの辺りも人気が出てきていたので、建て替えが決まってから1年ぐらい、物件を探しても全然空きがなかったんです。

この場所は、もともと20年以上続いた「太田寿司」というお寿司屋さんだったんですよ。その大将がのんべえで酒癖が悪い人やったんですけど(笑)、その人が前のお店にたまに来てくれてて。

──その人がお寿司屋さんをたたむ、と?

田中:そう。直接太田寿司さんが声をかけてくれて、不動産屋を挟む前に話をつけちゃいました。そこからは話が早かったので、前の店を営業しながらここの改装を進めて、1カ月ぐらいしか休まずに、うまいタイミングで移転できました。

──平成25年だったら、もうこのあたりはすでに「奥渋谷」と言われて人気が出ていましたよね。

田中:たぶんその時期から飲食店でこの辺の物件を探している人が増えたんです。その割には物件がないところやったんで、直接声をかけてもらえたのはラッキーでした。

──お店をされる前は何をやっていたんですか?

田中:実は今もやっているんですが、もうひとつの仕事としてデザイン系の仕事をしています。

──なるほど。デザインのお仕事と並行して、バーの店主もされているのですね。お店を始めようと思ったきっかけは何ですか?

田中:妻が仕事を辞め、「なにか店でもやろうかな」という話になりました。何回か奥渋谷~代々木八幡エリアに遊びに行き、見ていて「いい街だな」と思っていましたし、知人から「これからこのエリアは面白くなりそうだよ」という話も聞いていました。自分も含め”サードプレイス”として立ち寄れる場所を友達と一緒にやろう」と、そういう流れでお店が始まり、今の日替わり店長制のスタイルになりました。

──“自身のサードプレイス”としての場所。面白いですね。新しくお店を作るというより、仲間のコミュニティを作ろうという感じだったのですね。

お酒の種類がたくさん。カウンターにはバラエティ豊かなクラフトジンが並ぶ

田中:僕は出身が京都なんですが、京都なんかでは割とそういう店がよくあるので、お店運営も友達とつながって楽しく運営したいと思いました。お酒にはこだわってセレクトしています。スタッフには、今でいうLGBTの人やハイチ人など、いろんな方がいました。この場でいろいろな方と交流ができるのが良いですね。だから、バーの経験がなくても、やる気やこの店に興味がある人は、一緒にやりたいなと思っています。

──人のつながりや奥渋谷エリアに集う人々と空気と相まって、心地よいお店になっているのですね。ちなみに「ザンジバル」というお店の名前の由来も聞いてもよいですか。

田中:名前を考えていたときに友達から紹介されたカメラマンの方が、アフリカのザンジバル島をテーマにした写真集を持ってきてくれました。その写真集を見ていて気づいたのですが、たまたま自分の好きな曲がブラジルのミュージシャンEdu Lobo(エドゥ・ロボ)の『ザンジバル』でした。のちにいろいろなミュージシャンがカバーしていたようです。そんな不思議なつながりを感じて、ザンジバルについて調べてみました。

濁音の響きも良いし、Zanzibar“ザンジバル”のスペルの最後が“bar”になっているのもいいし、なかなかない名前だろうなと思って、この名前に決めました。ザンジバル島は、フレディ・マーキューリーの出身地としても有名ですよね。

店のドアは、ザンジバル島の青い海と、僕のイメージの赤い星をデザインしました。ネオンサインはザンジバルの頭文字「Z」ですが、わざと“乙(オツ)”と見えるようにしています。レトロフューチャーみたいな雰囲気で、一見見てなんて書いてあるのかよくわからない感じを出したくて。「“乙(オツ)”の店にやってきました」とSNSに書く人もいて、結構みんなお店のことを“乙(オツ)”と言います(笑)。

トップに“オツ”のネオンを掲げ、鮮やかな青地に赤い星の扉が目印

──なるほど。名前の由来も不思議な縁だったのですね。そういえば、ザンジバルでは必ず食べておきたい名物フードがあると聞きましたが。

自家製ピクルスが添えられた、名物のキーマカレー。京風のやさしい味がやみつきに

田中:僕は京都出身なのですが、自分の好きな甘辛味の、関西風カレーを作っています。ザンジバル島はグローブというスパイスが有名らしく、カレーが国民食のインドへスパイスを輸出して栄えたと聞きました。それでバーでも名物としてカレー作ろうと思いつきました。カレーがある日は水、木、金、土。営業時間は夜8時から朝5時までです。このあたりは色んな働き方の人がいるので、深夜にカレーだけ食べにきたりする人もいます。

──なんと5時まで営業されているんですね!このエリアはフリーランスも多いので、自分のライフスタイルに合わせてふらっと立ち寄れるのはとても心強いですね。ちなみにザンジバルではフードだけではなく、面白いお店づくりをされていると噂に聞きましたが。

田中:日替わり店長制でお店運営をしています。いまのレギュラー店長は5名ですが、全員本業もありますし、休む人もいるので、近くに住んでいる7、8名のピンチヒッターの方もいます。店長にはお酒をつくってもらって、料理は僕が出します。お客さまには気軽に立ち寄って“ちょっと一杯”を楽しんでほしいですね。

──なるほど。日替わり店長たちの“サードプレイス”にもなっているのですね。奥渋谷~代々木八幡エリアは年々人気を増していますが、どういった方々がお店に来られますか。また、お客さま層の変化を感じることはありますか。

田中:年齢、職業不詳の人が多いですね。話を聞くと実は結構すごい人だったりするので、気になると思わず「何してはるんですか」と聞いちゃっています(笑)。

最近は海外の人が増えましたね。あとは、前と比べて平均年齢がちょっと下がってきた気がします。今は店長も30前半の人が多いので、そういう人が多いのかなと感じています。

──最後にザンジバルで人気のお酒を教えて下さい。

田中:品揃えもクラフトジンがダントツ多く、お客さまにも人気ですね。飲み方は、華やかさを感じられるロックやソーダ割りが多いです。国産の個性豊かなスモールクラフトのジンもいろいろと入れています。ジンは蒸留酒をベースに作りますが、主原料となるお酒は焼酎でもなんでもよくて、いろいろなボタニカルを入れるたりして、個性を出せるところがおもしろいんですよ。

ずらりと並んだクラフトジンをいろいろと説明していただきました。北海道のジンには利尻昆布、宮崎のクラフトジンには日向夏が入っていたり、ご当地の素材がよく使われるそう

──クラフトジンは、日本でもじわじわブームになりつつあるという噂ですが。

田中:ブームに乗っかってではないのですが、僕はもともとジンが好きなんです。日本のクラフトジンブームの火付け役になったドイツ生まれの「MONKEY(モンキー)47」というジンはめちゃくちゃ美味しいです。タイムやローズマリーなどのハーブや花を入れているものもありますし、クラフトジンはたくさんの種類がありますよ。将来的には、ザンジバルオリジナルジンを作りたいです。

小さな間口のお店の中は、年齢も国籍もバラバラの、いろいろな人たちがリラックスして居られる心地よい“サードブレイス”感がありました。縛ることなくゆるやかなつながりを大切にする奥渋谷っぽさは、田中さんのキャラクターからも滲み出ていました。名物のキーマカレーは体に優しい味で、お夜食にもぴったりです。

田中達也(たなか・たつや)さん

京都出身。音楽好き。お酒好き。ホットドック好き。20代前半で上京しバンド活動に没頭。好きな事を仕事にすべく興味ある事にはとりあえず首を突っ込むのが信条。現在もお店をやる傍ら新たな刺激を求めて彷徨ってます。ZANZIBARでインスタやってます! 「お店で面白いイベントをやってくれる方、空いてる時間にBARで働いてみたい方募集してます!!」

 

ZANZIBAR(ザンジバル)

渋谷区富ヶ谷1-43-23 (営業時間 20:00-5:00)

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