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まだ本当の「サウナ」を知らない貴女へ。『はじめてのサウナ』刊行記念トークイベント

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肌が綺麗な3人。日常的に「ととのって」いる人は、デトックス効果もばつぐんのようです。サウナで「ととのう」とは一体どういうことなのでしょうか?

 
出版社リトルモアと書店SPBSによる共同企画『憂うつを乗り越える!「すこやか研究所」トークショー』。第1回として、『はじめてのサウナ』刊行記念トークショーが行われました。テーマは、「カラダをすこやかにする方法」。“サウナ愛好家”であり写真家の池田晶紀さんが、”サウナビギナー”かつ読者代表である“おみゆちゃん”こと小谷実由さんと参加者のみなさまに向けて、語り尽くせないサウナの魅力、そしてサウナの楽しみ方を紹介してくださり、大いに盛り上がりました!  司会進行は池田さんと同じく“サウナ愛好家”であり『はじめてのサウナ』の編集担当、リトルモア加藤基さんです。
 
文=佐藤南(SPBSインターン)
写真=SPBS編集部
 

『はじめてのサウナ』誕生秘話

加藤:さっき事務所で、小谷さんがめちゃくちゃ本読んできたって聞いて。
 
小谷:昨日も寝る前に読みました。
 
池田:そうなんですか。
 
加藤:マンガ家で「サウナ大使」のタナカカツキさんと、昨年の冬前ぐらいからビギナー向けのサウナの本を作ろうって話をしてたんですけど、カツキさんが「女性向けのサウナの本を作りたい」っておっしゃって。というのは池田さんもよくご存知の通り、おっさんはすでにサウナに行きまくってるじゃないですか(笑)。
 
池田:そうそう。それを変えていきたいわけですよ。
 
加藤:いい香りを楽しんだり、デトックスしたり、サウナって本来女性向きだから、女性にアピールしていかなきゃいけないと思って。で、その時、『She is』っていう女性のためのサイトが、ちょうどローンチされたんです。
 
小谷:あー、あの時。
 
加藤:こんな人が『She is』には登場します! みたいなのが発表されて、いろんな女性が並んでる中に、小谷さんもいて。カツキさんと『She is』を見てて、ここに出てる人、ここを見てる人がサウナにガサーって行ったら世の中変わるよね、って話をしてたんです。それで、本を作りながら想定読者層として顔を思い浮かべてたのが小谷さんだったんですよ。
 
小谷:わあー。
 
池田:じゃあ夢かなったじゃん。
 
小谷:私もうれしい!
 
池田:美しい女性がパイオニアになって推奨してると、やっぱりみんなそれに憧れるので、これから「女性サウナ大使」になってください。
 
小谷:はい!
 

土曜日の朝10時にお集まりいただいたすこやかなみなさま。トークの途中、池田さん指導のもと、おなかの下にある“丹田”を意識した呼吸で「プチ瞑想」を実践しました。

 

「サウナ=我慢して汗をかく部屋」は間違い!

加藤:サウナの、従来のイメージってどういうものでした?
 
小谷:私、葛飾区出身なんですけど、近くにあった「楽天地スパ」のイメージだったんですよね。今は近くに女性専用のものもあるんですけど、楽天地スパは男性限定じゃないですか。だから、男性の我慢比べ! みたいなイメージでした。
 
池田:元々の話をちょっとすると、50年ぐらい前、アーチェリーの日本代表の選手がオリンピックに出たときに、フィンランド選手の選手村にサウナがあったんですって。「何これ!」って衝撃を受けて、日本に帰ってサウナ作ったんですよ。で、日本って「間違った文化を輸入する」のが得意で、暑い箱だけ輸入しちゃったのね。そこから、我慢をすることが美学っていう時代があって、みんなサウナでグーっと我慢して。
 
小谷:あー、イメージあります。
 
池田:あのイメージが、結構日本の昭和の文化を作っちゃって、50年ぐらい続いたんです。で、それはどうもちゃんとしたフィンランドのものとは違うなってことに5年ぐらい前に気づいて、カツキさんが正しいサウナのあり方を指南する『サ道』っていうマンガを出して、今、ちゃんと輸入し直そうよっていう感じなんです。
 
小谷:じゃあまだ、新しい試みなんですね。
 
池田:そうなんですよ。フィンランド式サウナは、サウナストーブっていうストーブの上に熱い石が積んであって、その上に水をかけて蒸気を出すんです。水をかけることを「ロウリュ」、蒸気を仰ぐ行為のことは「アウフグース」って言うんですね。日本には今までそういう設備もなかったので、サウナはただの暑いグリルの箱だった。だから外国人がくると、日本のサウナはグリルだぜ! って笑うのよ。本当は湿度で汗をかくものなんです。
 
加藤:そうですよね。しっとりしてるのがいいんですよね。
 

正しいサウナの入り方とは?

池田:サウナ室に入って何したらいいんですかとか、何分入ったらいいんですか、とかよく聞かれるんですよ。
 
小谷:それすごい思います。
 
池田:それはね、自分と向かい合う時間なので、呼吸と向かい合ってください。そっと目を閉じて、手を上にして、瞑想するように呼吸するんですね。そうすると……暑くてそれどころじゃなくなってくるんですよ。
 
会場:(笑)
 
小谷:あれ? 急に現実的に(笑)。
 
池田:何分たったっけ? ていうか、もう暑くてどうでもいい! ってなったら出て、そしたら水風呂ですよ。冷たい! 拷問だよ! って思うかもしれませんね。でも、最初はちょっと足にかけてみてください。で、体が慣れてくるっていうことを信じて、どーんって入っちゃいましょ。最初は冷たい! ってなったのに、だんだん慣れてくる時間を楽しんでください。そうすると、「あれ? さっきまで冷たかったのに、何も感じない。鼻で呼吸してみたらどうだろう。そういえば本の中で、水になれとか言ってたような気がする。あれ、私は人だったのに水になろうとしてる……!」口呼吸すると、肺の中に冷気が入ってきて、「あれ、風が吹いている。さっきまで水だったのに、今度は風になる、ああ、視界がおかしくなってきた、グラングランする」……っていう自分と向かい合ってください。
 
小谷:……結構ハードな印象を受けました。
 
加藤:めちゃくちゃ楽しいんですよ。
 
小谷:えー? ちょっと今怖いです(笑)。
 
加藤:だってこの本の絵を描いたほりさんが初めて「ととのった」とき、やっぱりどこからどこまでが自分で、どこからどこまでが水なのかわかんなくなったって言ってましたよ。
 
池田:そう、そうなんですよ!
 

サウナマット製の服の下に「サウナ」Tシャツを着て来ていた池田さん。サウナ愛がファッションにもにじみ出ていました。

 

サウナで、そして日常生活で「ととのえる」

池田:にんべんに木と書いて「休む」なんですよね。で、これ一文字で「サウナ」って読むんですよ。
 
会場:(笑)
 
加藤:そう!
 
池田:休むことをしないと、がんばれないんですよ。サウナに入って、水風呂に入って、そのあと休憩します。ベンチに座って全身の力を抜いて、寝てるときと同じような腹式呼吸をします。丹田って言われる場所、おへそから指2本分下の部分をちょっと触って、目をつむって、できるだけ意識の中で深い呼吸をしていくイメージをしながら、集中してこの呼吸法をやってみてください。1分間やると、呼吸の回数が減っていって、「あれ? さっき水風呂でいた世界より、もっとすごい感じになってきた、こんなのいままであったっけ? ランナーズハイみたいな感じかな。いや違う、なんだろう……」みたいな。
 
加藤:なります! なります!
 
池田:これね、冗談みたいだけど本当なんだよね。
 
小谷:……怖い!
 
会場:(笑)
 
池田:体っていうのはポンプみたいなもので、冷たいとあたためようとしてポカポカするんです。
 
加藤:だからサウナ好きな人たちはみんな、どうやって冷やすかの方を考えてるんですよ。
 
池田:メインが水風呂なんですよ。
 
小谷:え?
 
池田:サウナ室は、オプションですね。
 
会場:(笑)
 
小谷:でも、「サウナ」って言うんですね。
 
池田:そうなの、今日、みなさんの認識を変えて欲しいのは、サウナって言ってしまえば水風呂のことなんですよ。
 
加藤:もっと言えば、そのあとの休憩を指すんです。
 
池田:そうです、そうです。サウナ→水風呂→休憩、このセッションを3回します。そのあと体を拭いて、服を着て、ああー、服っていうのはあったかいんだ、気持ちいいんだっていう気持ちになるんです。それで、リクライニングかなんかに座るんですよ。15分ぐらい目をつむって、ちょっとトランスするんですね。その状態で寝てみると、「あれ? 知らないなこの感じ、なにこれ? なんかほわーっとするなあ」みたいな、大休憩っていう時間がやってくるんですよ。
 
会場:(クスクス)
 
池田:こんな感じでトランスして、快楽の部分で楽しめるし、健康法として血の巡りをよくしてくれる。リラックスっていう面では、デトックスしたり、「考えない」時間を自覚的に作れて、サウナはおすすめです。
 
加藤:『はじめてのサウナ』って、サウナの歴史とかめちゃくちゃわかる本ではあるんですけど、タナカさんはあとがきに、すごいこと書いてるんですよ。今までサウナの健康効果とかいろいろ書いてきたけど、そんなの本当はどうでもよくて、日常の中に、「気持ちいい」とか快楽を感じる瞬間っていうものを置く、っていう生活を提案したいんだって。でも確かにそれは本質的なことだなあ、と。
 
池田:乱れた心を、ちょっと落ち着かせるために行ってるんですよ。
 
加藤:ルームスプレーとかアロマキャンドルとか使います?急な話ですけど。
 
小谷:あ、たまに。
 
加藤:サウナ行ってる人たちも、あれやってるんですよ。さっき説明した「ロウリュ」に、白樺の木とか、アロマオイルとか入れて、汗だくのおっさんたちが香りをめっちゃ楽しんでるんです。
 
池田:あれがまたいいですよ、森林浴で。
 
小谷:女子力めちゃめちゃ高くないですか。
 
加藤:めちゃくちゃ高いんですよ。だから女性のためのサウナの本を作ったんです。
 
小谷:なるほど。
 
池田:自然体験を、どう自分の生活の中に入れていくか。フィンランドでは、サウナはもっと日常的で生活に密接したもの。それを日本にもう一回ちゃんと取り入れるときに、どう遊んでいくか工夫して、新しいリラックスの方法にしていきたいところだよね。
 
加藤:そうですね。

(本記事は、2018年5月12日にSPBS本店で開催されたトークイベントの一部を収録したものです)

 

池田晶紀(いけだ・まさのり)さん / 写真家

1999年自ら運営していた「ドラックアウトスタジオ」で発表活動を始める。2003年よりポートレート・シリーズ『休日の写真館』の制作・発表を始める。2006年株式会社「ゆかい」設立。2010年スタジオを馬喰町へ移転。オルタナティブ・スペースを併設し、再び「ドラックアウトスタジオ」の名で運営を開始。国内外で個展・グループ展多数。アーティスト三田村光土里とのアートユニット「池田みどり」としても活動。
現在、Coyote「水草物語」で連載中。フィンランドサウナクラブ会員、サウナスパ健康アドバイザー、シェアリングネイチャー指導員、水草レイアウター、かみふらの大使など。

 

小谷実由(おたに・みゆ)さん / モデル

ファッション誌やカタログ・広告を中心に、モデル業や執筆業で活躍。一方で、さまざまな作家やクリエイターたちとの企画にも取り組む。昭和と純喫茶をこよなく愛する。愛称はおみゆ。

 

加藤基(かとう・もとい)さん / 編集者

編集者、ワイン・エキスパート。『水草水槽のせかい』担当時、大使から直々にサウナの良さを説かれ、すっかりハマる。人から悩み相談を受けるといつも「サウナ入れば?」の一言で解決しようとする。あの「タモリ倶楽部」には2度出演している。

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